がん医療の進歩により、がんに罹患しても自宅で生活し、治療することが可能になりました。しかし、治療による副作用を抱えながらの生活には、多くの困難が伴います。朝日エルは2008年に、がん医療の専門家や有識者、治療経験のある方などが集結したNPO法人キャンサーリボンズの発足に携わり、がん患者さんの『治療と生活をつなぐ』さまざまな活動の企画・運営支援をしています。発足当時、注目されることが少なかった「がん患者さんの暮らし支援」が今では多くの医療関係者や学会、社会で語られるようになるなど、先駆的な役割を果たしています。
がん患者さんの就労支援は、国のがん対策推進基本計画の柱のひとつです。患者さん自身も、働き続けたいと考える人が増えています。しかし、身体の状態は罹患前とは大きく異なり、仕事をする上での体調管理、スケジュールの調整や同僚・上司とのコミュニケーションなどは容易ではありません。キャンサーリボンズではNPO発足とほぼ同時に、がん患者さんの就労に携わる多職種へのヒアリングやアンケート調査を実施、それを基にいち早く、医療と職場をつなぎ治療と就労の両立に活用できる支援ツールを開発しました。 書き込むことで見通しや課題が明らかになり、人にも説明しやすくなることが特長です。
リワークノート |
キャンサーリボンズでは、がん患者さんに調査協力をいただき「エビデンス(根拠)に基づいた」支援をすることを大切にしています。新しく開発した、「朗読」をツールとした患者サポートグループ「朗読ワークショップ」についても、患者さんの心にどんな影響をもたらすのかを心理測定尺度を用いて分析しました。その結果、患者さんのTMD(Total Mood Disturbance=総合感情障害指標)が大きく改善することが明らかになり、日本サイコオンコロジー学会、日本癌治療学会(患者支援団体対象のプログラムとして)、日本がん看護学会で発表しました。当研究には、精神腫瘍科や放射線科の医師、看護師、臨床心理士、がん体験者、朗読家など参加しています。
朗読ワークショップの様子 |
キャンサーリボンズでは、企業による、がん患者さんの暮らしの質の向上を目指した商品開発をサポートしています。医療者の目の届かない自宅での生活においては、治療による副作用のケアなどを患者さん自身が行う場合があります。しかし、ケア用品の機能の不十分さ、誤った方法でのケア、また手順が複雑であったりすると、継続することができずに病院に行く前に症状が悪化することも稀ではありません。キャンサーリボンズでは、患者さんや医療従事者のニーズと企業のシーズをマッチングし、患者さんが自宅で無理なくケアを継続するための商品開発や情報提供をサポートしています。
今では誰もが知る乳がん検診の普及啓発を呼びかける「ピンクリボン運動」。2000年、日本におけるピンクリボン運動の先駆けとして、乳がんの早期発見・早期治療による死亡率の低下を願う4人の医師が、NPO法人乳房健康研究会を発足(2013年に認定NPO法人化)させました。その立ち上げと運営を強力にサポートしたのが朝日エルです。
認定NPO法人乳房健康研究会の代表的な活動として、「ピンクリボンウオーク」があげられます。「ピンクリボンウオーク」は、乳がんの患者さんやそのご家族、治療に携わる医療従事者、乳がん啓発に関心のある一般の方々が楽しく、互いに励まし、つながる機会として2001年より毎年開催し、朝日エルは企画や協賛企業の募集、当日の会場設営、運営・ステージ進行などほぼ全てを担っています(2011年は東日本大震災に伴い中止)。毎年2000名を超える方々が参加し、リピーターも多い大規模なイベントです。ウオーキングイベントというだけでなく、乳がんの早期発見・早期治療を啓発するセミナーやマンモグラフィ体験等のイベントを実施し、幅広く活動しています。
ピンクリボンウオーク2013 スタートの様子 |
乳がん検診受診率アップを目指す認定NPO法人乳房健康研究会では、2013年より乳がん検診を勧める人材育成事業として「ピンクリボンアドバイザー認定試験」を開始し、2016年3月現在、約6000人を認定しました。 乳がんは、日本人女性の12人に1人が罹患し、壮年期(30~64歳)女性の死亡原因のトップですが、早期に治療を行えば90%の人が治癒しています。にもかかわらず、日本では乳がん検診受診率の伸び悩みが問題となっています。「ピンクリボンアドバイザー」は、乳がん検診の重要性について理解し、女性たちの背中を押す役割として、医療従事者のみならず、健康のために知識を身につけたい人、ピンクリボン運動に興味がある人やピンクリボン運動に現在関わっている人に認定を受けていただくことで、個々人が乳がんの早期発見・早期治療を啓発する一員となっていただく活動です。
ピンクリボンアドバイザー試験の様子 |